小児矯正の適切な開始時期とは?成長期を活かす見極めポイント
目次
小児矯正はいつから始めるべき?成長期を活かすタイミング
お子さんの歯並びが気になり始めたとき、多くの保護者の方が「矯正はいつから始めるべきなのか」と悩まれます。小学生のうちに始めた方がいいのか、それとも永久歯が生え揃ってからの方がいいのか。
結論からお伝えすると、小児矯正の開始時期は「一人ひとりの成長段階や症状によって異なる」と言えます。早く始めた方が良いと言われたりすることも多いですが、早ければ早いほど良いというわけではありません。
浅草橋駅前歯科 矯正歯科では、お子さん一人ひとりの成長に合わせた最適な矯正開始時期を見極め、無理のない治療計画をご提案しています。今回は、小児矯正を始める適切な時期と、その見極めポイントについてお伝えします。

小児矯正の理想的な開始時期とは
小児矯正の理想的な開始時期の一つは、一般的に7〜8歳頃と言われています。この時期は上下の前歯が生え変わり、将来の歯並びがある程度予測できるようになるためです。
ただし、これはあくまで目安であり、お子さんの歯の生え変わりの状況や、どのような不正咬合(歯並びの問題)があるかによって、最適な開始時期は変わってきます。早期に対応した方が良い場合もあれば、もう少し様子を見た方が良い場合もあるのです。
矯正治療のタイミングで最も重要なのは、「顎の成長がどうなりそうか?成長を活かせるかどうか」という点です。子どもの顎はまだ成長途中であり、この成長力を利用することで、歯を動かすだけでなく、顎の骨格そのものをある程度誘導させることができます。
症状別に見る矯正開始の適切なタイミング
歯並びの問題には様々なタイプがあり、それぞれ適した対応時期が異なります。主な症状別の目安をご紹介します。
受け口(反対咬合)の場合
受け口は、下の歯が上の歯よりも前に出ている状態です。この症状は成長とともに悪化する傾向があるため、子供のうちからの改善が推奨される場合があります。場合によっては、大人の歯が生え変わる前の乳歯の状態で、3〜5歳という早い段階からの対応を行うこともあります。
受け口には、歯の位置だけの問題である「歯槽性の受け口」と、顎の骨格自体に問題がある「骨格性の受け口」があります。特に骨格性になりそうな場合は、顎の成長が大きく進む前に治療を始めることで、悪化していくのを防ぐことができる場合があります。その場合、将来的な外科手術を回避できる可能性が高まります。
私の臨床経験では、受け口のお子さんは早期に対応することで、思春期以降の複雑な治療を避けられることも多くあります。
ただし、子供の時期に対応して改善させた場合も、その後の成長などで後戻りしたり、追加の治療が必要になる場合もあるので、長期的な経過観察が必要ではあります。
出っ歯(上顎前突)の場合
上の前歯が前に突き出している出っ歯は、6〜10歳頃の対応が効果的になる場合があります。この時期は永久歯への生え変わりに合わせて、顎の成長を利用した治療ができます。
指しゃぶりや舌癖が原因となっていることも多いため、これらの習慣の改善も併せて行うことが大切です。もちろんいったん改善された場合も、思春期の成長による後戻りなどのケアをしていく事は大切です。
叢生(歯のガタガタ)の場合
歯が重なり合ってガタガタになっている叢生は、永久歯が生え揃う前の小学生期に対応することで、抜歯を回避できる可能性が高まることがあります。顎の成長を促して、広げてあげる事で、歯が並ぶスペースを確保する治療が有効です。
ただし、すべての叢生に早期治療が必要なわけではありません。軽度の場合は、永久歯がすべて生え揃ってからの治療でも十分な効果が得られることがあります。また、無理やり広げて歯を詰め込んで並べるより、中学生以降で抜歯をして矯正した方が、望ましいこともありますので、何でもかんでも広げて非抜歯が正しいわけではありません。

小児矯正の治療ステップと期間
矯正治療は、大きく分けて「第1期治療」と「第2期治療」の2段階で進められることが一般的です。
第1期治療(混合歯列期)
6〜12歳頃の乳歯と永久歯が混在する時期に行う治療です。この段階では、顎の骨の成長をコントロールしながら、歯が正しく並ぶスペースを確保して、適切な位置に永久歯が生えてくるのを誘導させてあげる、ある程度骨格のバランスも整えることが目的となります。また、歯並びを悪くさせる、舌の癖などを取り除くトレーニングを行い、悪くなっていくのを防ぐことも大きな役目となります。
平均的な治療期間は1年半〜3年程度ですが、症状の程度や成長の状況によって個人差があります。当院では学校生活への影響を最小限にするため、装置の使用時間などにも配慮しています。
第1期治療が終わった後は、すべての永久歯が生え揃うまでの1〜2年間は経過観察になる場合が多いです。この時期の成長の様子を見ながら、第2期治療の必要性を判断していきます。
第2期治療(永久歯列期)
12〜15歳頃、永久歯がすべて生え揃ったタイミングで行う治療です。この段階では、歯をきれいに並べて見た目を良くしていくのはもちろんですし、噛み合わせを整えて健康な歯並びをつくることが目的となります。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正などが用いられ、平均的な期間は1年〜2年半程度です。第1期治療をしっかり行っていれば、この第2期治療が短期間で済むことも多いです。
あなたのお子さんの歯並び、気になることはありませんか?もし少しでも疑問に思うことがあれば早めの相談をおすすめします。
成長期を見極める重要なポイント
小児矯正で最も重要なのは、お子さんの「成長期」を正確に見極めることです。同じ年齢でも、成長のスピードには大きな個人差があります。
当院では、お子さんの成長段階を正確に判断するために「手のレントゲン写真」を撮影することがあります。手の骨の成長状態から、顎の成長ピークを予測することができるのです。
特に「拇指尺側種子骨」という、親指の付け根部分に現れる小さな骨の有無を確認します。この骨が現れると「成長のピークが来た」という判断をする指標の一つとなります。その後2〜3年で骨の成長は止まるとされています。
こうした検査結果に基づいて、一人ひとりの歯並びや状態に応じて、最適な治療タイミングと方法をご提案しています。
成長の余地がまだある場合は顎の成長を考慮した計画を、成長のピークが過ぎている場合は歯の移動でどう改善できるのかを中心として考えた治療を計画していきます。

小児矯正のメリットと注意点
小児矯正には、成長期だからこそ得られるメリットがあります。顎の骨がまだ柔らかく成長中であるため、歯を抜かずにスペースを確保できる可能性が高まります。また、この時期に適切な治療を行うと、将来的な矯正治療の負担軽減や、咀嚼・発音・嚥下・呼吸などの口腔機能の改善も期待できます。
一方で、治療期間が長期にわたることや、成長の予測が難しいため小児矯正だけでは終わらず、二期治療が必要になる可能性もあります。また、取り外し式の装置を使う場合は、お子さん自身の協力が不可欠です。
大切なのは、「早ければ早いほど良い」という考え方ではなく、お子さん一人ひとりの成長段階や症状に合わせた最適なタイミングで治療を始めることです。
まとめ:お子さんに合った最適な矯正開始時期を
小児矯正の開始時期は、お子さん一人ひとりの歯の生え変わりの状況や成長段階、どのような不正咬合があるかによって異なります。まず必要があるかないかも含めて、前歯の生え変わりがおきる7〜8歳頃に一度矯正相談を受けることをおすすめします。受け口(反対咬合)など明らかにおかしいなと感じた場合は、もっと早い段階での対応が効果的な場合もあります。
当院では、お子さんの成長を正確に把握した上で、最適な治療計画をご提案しています。お子様の歯並びで気になることががあれば、まずは気軽にご相談ください。お子さんの健やかな成長と美しい歯並びをサポートいたします。
